
心の動的な構造を対象とするダイナミックスキル理論では、「動的なスキル」という概念をまず理解する必要があります。スキルと言うと何か特定の技術のようなものをイメージしてしまうかもしれませんが、ダイナミックスキル理論で定義されている動的なスキルとは、心の構造そのものです。
そして、心の構造は構造から生み出される思考・行動と表裏一体であるため、スキルとは動的に組織化された思考・行動とも捉えることができます。
動的なスキルを定義づける上で、最も大切なことは、スキルというものが特定の文脈に基づいて発揮されるということです。言い換えると、スキルとは特定の文脈の上で発揮される、活動に根ざした思考や行動と言うことができます。
具体的には、私たちは何か抽象的・一般的なスキルを持ってリアリティを生きているわけではありません。そうではなくて、私たちは特定の文脈に基づいたスキルを発揮しながら生きています。
例えば、ビジネス社会という特定の文脈で要求されるスキル、サッカーなどのスポーツという文脈において発揮されるスキル、子育てという文脈において発揮されるスキルなど、特定の文脈が私たちに突きつけてくるスキルというのは、常にその文脈に対応したものなのです。
こうしたスキルというのは、あらかじめ定められた構造や法則によって発達するのではありません。私たちのスキルが活動を基盤にし、文脈に依存したものである以上、スキルというのは実際の文脈における実践活動を通じてしか発達しないのです。
文脈に根ざした実践活動によって発達していくスキルは、徐々に新しい文脈の上にも構築されていきます。これらの特徴を考慮し、カート・フィッシャーは、リアリティで生起する動的な文脈に基づいて発揮されるスキルを「動的なスキル」と命名するに至りました。
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