722. インタビューを受けて
今朝は五時半に起床し、履修コースの課題論文をいくつか読み進めていた。早朝に読み進めていたのは、人間発達に関する哲学的な論争に関するものである。 古典的な論点であるが、生得主義と経験主義に関する論争において、経験主義の研究者が抱きがちな、生得主義に対するいくつかの誤った批判を...
57. 認知構造と活動の分離:チョムスキー派とピアジェ派の思想の限界
生得論者と多くの認知科学者はこれまで、人間の深層部分に存在する能力と実際の活動を切り離す思想特性を持っていました。こうした分離を提唱した代表的人物は、ノーム・チョムスキーです。彼が主張する普遍文法は残念ながら、実際に私たちが言語を用いてコミュニケーションをしている際に現れる...
54. 新生得主義の誕生とその限界点
発達現象の可変性が認められるにつれて、発達理論のフィールドの中に新しい思想立場が生まれました。それは、「新生得主義」と言われるものです。新生得主義も発達構造を静的なものとみなすパラダイムの傘下に置かれているのですが、既存の段階モデルに代替する理論的枠組みとして一時期注目され...
44. プラトン→カント→チョムスキーへと受け継がれる静的構造主義の系譜
これまでの記事で、心の発達に関する生得論的アプローチと経験論的アプローチの議論について見てきました。デカルト的発想に縛られた両者のアプローチは、本来動的であるはずの心の構造を静的なものとみなしています。 丹念に文献調査をおこなってみると、両者のアプローチはデカルト以前、古代...
42.生得論と経験論の暗黙的融合
前回の記事で、生得論者と経験論者の争点とデカルト的二元論が既存の発達理論のパラダイムにもたらしてきた影響について述べました。発達に関する両極の議論は、この一世紀以上続いています。 両極に属する近年の発達論者の議論を俯瞰してみると、どちらも厳密の意味で生得論的主張でも経験論的...
41. 人間の発達に関するデカルト的二元論思想:先天性・後天性論争を超えて
発達理論の歴史を紐解くと、私たちの知識やスキルが生得的なものなのか後天的なものなのかという議論が盛んにおこなわれていました。こうした議論は、デカルト的な思考の枠組みに大きな影響を受けています。 実際のところ、生得論者の思想と経験論者の思想は、心とその他のものを切り離してしま...
37. 生得論と目的論を超えて:発達の青写真と発達の行く末
これまでの記事で明らかなように、人間の発達は、実に複雑で神秘的ですらある現象です。それでは、私たち人間の発達に終着点はあるのでしょうか? 目的論的な考え方を採用すると、発達現象には目的があり、私たちはどこかに向かって発達しているとみなすことができます。しかし、実際のところ、...