454. 促しをもたらす文章
昨日の夕方は面白いことに気づいた。書物を読むことに関してあれこれ考えていると、自分の内側に自己展開を促す書物の新たな特徴が浮かび上がってきたのだ。 フローニンゲンの街に到着してから二ヶ月半が経つが、かろうじて毎週末に日本語を読むという実践が継続している。土日の両日に日本語の...
375. 自助
フローニンゲンの気候も随分と秋めいてきたのだが、今日はとても暑い日であった。夏としての役目を果たし、爆発の中にフローニンゲンの夏が死んでいくかのようであった。明後日からは、最高気温が20度前後の気候となるようだ。 日ごとに自分の思考空間が英語という言語に支配され、その間隙に...
323. 欧州小旅行記:ノートルダム大聖堂の妖気
デカルト通り39番地にある辻先生の旧宅の前でしばらく時間を過ごしていた。その場で立ち止まりながら、辻先生はどのような日々をこの街で過ごしていたのかについて想像を巡らせていた。『パリの手記』には記述されていないような先生の心の動きや表情を想像していたのだ。...
322. 欧州小旅行記:森有正先生と辻邦生先生ゆかりの地パリでの確認
ニューシャテルから四時間弱の列車の旅を終え、ようやくパリ中心部のリヨン駅に到着した。列車を降りてプラットホームを踏んだ瞬間に気づいたのだが、パリへは初めて訪れたにもかかわらず、ここは馴染みのある感じの土地だとわかった。どちらも共に正しいと思うのだが、パリは私のことを全く相手...
300.「美」と「組織のイノベーション」に関する脱神秘化
——学術論文とは、人類への手紙である——ウンベルト・エーコ 森有正先生の全集のどこかで、バッハの音楽は主観的・直感的に生み出されたものではなく、客観的に秩序化された音楽的方法論に基づいて生み出されている、というような記述を見かけたことを記憶している。つまり、バッハは自分の音...
290. 欧州小旅行計画
今日は先ほど、久しぶりに天気雨に見舞われた。空は晴れているのに雨が降るというのは不思議だな、と思っていた幼少時代のある記憶が鮮明に蘇ってきた。この記憶を再想起したことはおそらく初めてだったので、オランダのこの予測のつかない天候に対してある意味感謝をした。...
285. 純粋経験からの出発
この瞬間において偶然だと思っていることが果たして本当に偶然なのかどうかを考えている。というのも、そうしたことを考えざるをえないぐらい、昨年以降、実に不思議な偶然が多発しているのだ。 先ほど湯船に浸かりながら、自らの個別的な体験と徹底的に向き合うことによって、普遍的な何かを掴...
271. 初日からのハプニングの嵐:その1(機内編)
フローニンゲンでの三日目の朝を迎えた。怒涛の嵐が過ぎ去り、嵐の後の静けさに浸っている感覚だ。というのも、日本を出発してからの空の旅を皮切りに、そこからフローニンゲンの新居に着くまでが本当にハプニングの連続だったのだ・・・。...
270. オランダでの生活に向けて
出発6日前の2016/7/26の日記 未だ形にならない思念の塊を文章として表現することによって、なるべく心を落ち着かせようとする自分がいる。日々の生活の中で湧き上がる雑多な考えや思いを言葉にすると、混沌さに心身を乗っ取られるのではなく、均衡を心身にもたらすことができると感じ...
269. 空、そして出発
——人が自己の根底に持つオリジナルな本源的な知覚。それの探求のために、考究のために、また検討のために、人は出発するのだ——森有正 日本を離れる時が来た。今日という出発の日は、どんよりとした雲が空を覆っている。だが、雲の合間からわずかばかり青空がこちらを覗いている。...