77. シュタイナーの発達思想とピアジェの発達思想の接点
これまでの記事で、シュタイナーが指摘する身体的な発達と認知的な発達との関係性について紹介してきました。特に、シュタイナーが提唱するエネルギー体としての身体に着目しながら、早期からの詰め込み型教育や身体性を無視したカリキュラムがもたらす弊害について言及しました。...
72. カート・フィッシャーの発達モデル:発達要因と発達のメカニズム
これまでフィッシャーの理論の大枠を紹介してきましたが、実際のところ、フィッシャーの発達モデルは、他の新ピアジェ派の理論と多くの点で異なります。主な相違点は、認知的な発達を説明する方法にあります。 もちろんフィッシャーは、発達における情報処理的側面を否定しているわけではありま...
66. 新ピアジェ派の発達思想:パスカル・レオンの発達理論
元来、新ピアジェ派の理論家の多くは、ピアジェが提唱した段階モデルを人間の情報処理能力と絡めて説明していました。特に、発達段階の成長要因と発達の個人差を情報処理能力と関連づけていました。 その中でも、カナダにあるヨーク大学の教授パスカル・レオンは、情報処理能力と認知的発達との...
57. 認知構造と活動の分離:チョムスキー派とピアジェ派の思想の限界
生得論者と多くの認知科学者はこれまで、人間の深層部分に存在する能力と実際の活動を切り離す思想特性を持っていました。こうした分離を提唱した代表的人物は、ノーム・チョムスキーです。彼が主張する普遍文法は残念ながら、実際に私たちが言語を用いてコミュニケーションをしている際に現れる...
56. ピアジェの貢献:スキル獲得の構成的なプロセス
ピアジェは、観察された発達現象に対して構成主義的な説明を加えたことで有名です。どういうことかというと、私たちは実際の活動を通じて、ある発達段階から次の発達段階へ移行していくとピアジェは説明しました。 例えば、5ヶ月ぐらいの幼児は、目の前にある物体を掴んだり遊んだりすることは...
55. 新生得主義の研究:ピアジェが提唱した年齢基準の引き下げ
前回の記事で、新生得主義について簡単に紹介致しました。今回の記事は、もう少し詳細に新生得主義の研究内容や発達に対するアプローチなどを紹介していきたいと思います。 新生得主義者は、ピアジェ派が子供の発達プロセスを明らかにするために用いていたタスクをより簡素化し、調査プロセスの...
51. ピアジェおよびコールバーグの段階モデル:可変性の隠蔽
ピアジェを始めとして、ローレンス・コールバーグなど、段階モデルを提唱する発達理論家の多くは、発達が持つ可変性を無視する傾向にありました。これらの理論家は、基本的に発達が持つ可変性を測定の異常値や誤謬として扱っていたのです。...
47. ピアジェを始めとした段階モデルの限界:発達の線形性・非線形性
人間の発達過程に構造的特性を見いだす思想において、安定的かつ不可変の構造の存在が鍵を握ります。例えば、こうした思想では、私たちのスキルが発達するプロセスの中に、確固たる規則性を見つけようとします。 ピアジェの研究が残した功績は、こうした確固たる規則性、つまり発達構造が持つ不...
46. 三つの代表的な静的構造モデル
発達理論のフィールドにおいて、心の構造を静的なものとみなしてしまう思想モデルをこれまで紹介してきました。これらの理論的枠組みを細分化すると、下記の三つの静的構造モデルに分類することができます。 一つ目は、ピアジェの発達段階モデルです。ピアジェの発達段階モデルにおいて、認知構...
38. ピアジェの理論の再考:ピアジェの功績と超克すべき点
発達理論を語る際に、ピアジェが残した功績を忘れることはできません。確かにルソー、カント、ヘーゲルなど、ピアジェ以前の思想家も人間の発達について言及していましたが、心の発達が持つ構造的な特性を体系的に研究したのは、ピアジェが最初であると述べても過言ではありません(ピアジェより...