2276. ダイバーシティの問題と相対主義的段階の問題
季節が冬と春を行ったり来たりしているのを実感する。季節はどうやら揺れているらしい。 その様子を観察してみると、まさに季節は人間と同じであるように思える。季節も私たちも共に、揺れながらにして進んでいくのだ。 これまでの季節は完全に冬という安定状態にあった。そこから様々な要因の...
1018. 哲学・数学・心理学・音楽
「逆説的な事柄は、哲学にとっての原動力である」というドゥルーズの言葉が印象に残っている。これは、哲学という思想体系を構築するという営みだけではなく、人間の発達においても等しく当てはまることだと思う。 逆説的な事柄は、発達の原動力であることは間違いない。それは単純に、弁証法的...
1003. 哲学の力と概念の力
なぜだか私は、ベートーヴェンのピアノソナタ第17番の第3楽章が始まるといつも仕事の手を止める。意識を向けようとせず意識がそこに向かうのだ。 『テンペスト』と呼ばれるこの曲、特に第3楽章は、必ずその存在を私に訴えかけてくる。そこに意識が向かう時、それが第17番の第3楽章である...
1001. 差異と差異、そして究極的な意味
気づかないうちに、いつの間にやら書き留めていた日記の数が1000を超えた。その数字そのものに意味はないのだが、それらが積み重ねてきた小さな差異の連続には、思わず立ち止まって考え込んでしまうような大切な何かがある。 米国の文化人類学者グレゴリー・ベイトソンが残した名言にあるよ...
533. エッシャーの『発展』という作品より
デン・ハーグのエッシャー美術館で鑑賞した幾つかの作品の印象が色濃く脳裏に焼き付いている。一つは、『発展(development)』という作品である。発達科学を探究している者として、この作品のタイトルを『発達』と呼びたいところだが、最初に翻訳した方が『発展』と命名しているので...
439. カート・レヴィンの理論より
発達心理学者のハインツ・ワーナーが指摘しているように、学習や発達の本質には「差異化」という現象がある。これは生物の進化のように、現在の特性がどんどん分化されていく形で私たちの学習や発達が進むことを示している。 先日、組織に関する研究で多大な功績を残した心理学者のカート・レヴ...
387. 雲と空
今朝起床した時に窓の外を見てみると、空一面が雲で覆われていることに気づいた。これは雨雲ではなかったが、薄く灰色がかった雲が途切れることなく空を覆っていた。この雲はひと続きの塊として同一性を保っていたため、上空を動いているのかどうか判断がつかなかった。...
351. 経験の内的濾過と内的分化
各種の歓迎セレモニーが終わり、落ち着きを取り戻した日常に戻っている。明後日は、心理学の修士課程に在籍する生徒だけを対象にした説明会がある。フローニンゲン大学の心理学の修士課程は10個のサブプログラムから構成されており、各プログラムの入学者数は不明であるが、ここでも多くの生徒...
233. 焦点化・代用化・差異化という三つの変容原則
記事217と230で紹介した「知性・能力に関する5つの変容原則」について、残りの原則をより詳しく解説したい。まだ説明していない原則は(3)焦点化(focusing)、(4)代用化(置換化:substitution)、(5)差異化(differentiation)である。これ...
166.記事157から165までのまとめ:測定手法と理論モデルの差異
それでは、ここで一旦これまでの記事「157-165(164を除く)」をまとめたいと思います。これまでのところ、「発達の高度」という概念を明瞭にするために、構造的発達理論の歴史において鍵を握る幾つかの概念を見てきました。 ケン・ウィルバーが提唱しているように、多種多様な知性領...