139. 知性発達理論の影と闇、そこからの救済
新ピアジェ派の功績は、発達プロセスを説明する優れた理論的枠組みを提唱しただけではなく、多様な発達プロセスに内包された複雑性を解析する測定手法を開発したことにあります。実際に、新ピアジェ派が提唱する発達科学は、既存の心理統計手法の領域を再構築し、測定手法の革新をもたらしたと言...
138. 「統合心理学」としてのダイナミック・スキル理論
これまで紹介してきたように、新ピアジェ派の伝統はジェームズ・マーク・ボールドウィンから、ジャン・ピアジェ、ローレンス・コールバーグ、カート・フィッシャー、セオ・ドーソンに脈々と受け継がれてきました。この伝統は、人間の認知とは何か、それはどのように発達するのかを解明しようとす...
135. 映画「バケモノの子」を鑑賞して:発達理論の観点より
「偉大な芸術は、あなたを、あなたの意志に反して、つかむ。そして、あなたの意志なるものを宙づりにする。あなたは、欲望、渇望、自我、自己収縮などから解放された、静かな深い森の中に開かれた小さなオープン・スペースに招き入れられる。この意識の中の静かなオープン・スペースを通して、高...
130. 人間としての器の成長と実務能力の成長
ハーバード大学教育大学院に在籍する発達心理学者ロバート・キーガンとカート・フィッシャーはともにピアジェから影響を受けた構成主義的発達論者ですが、両者が研究対象とする領域は若干異なります。ケン・ウィルバーが “Integral Psychology...
120. 発達理論の動向に対する雑感:静かに進行するフラットランド化
私はアメリカの思想家ケン・ウィルバーから多大な影響を受け、人間の意識の発達という領域に関心を持つに至ったわけですが、ウィルバーのインテグラル理論の枠組みを通して、現代の発達心理学の動きを俯瞰的に眺めてみると、「発達心理学が持つゾーン2の役割が洗練される一方、心の内面領域の探...
112. 新ピアジェ派が継承する五つの発達思想
新ピアジェ派はこの25年間にわたって、古典的なピアジェ理論の本質的な側面を保持すること、さらに探求が必要な箇所を発展させること、最新の実証研究に基づいてピアジェ理論の改定をおこなうことに力を注いできました。 以前私のメンターであったセオ・ドーソンから聞いた話なのですが、カー...
53. 発達の共時性:ロビー・ケースの実証結果
ここ数回の記事で、領域特定型発達モデルの限界について言及してきました。もう一度おさらいをしておくと、領域特定型発達モデルの限界点は、発達の可変性を蔑ろにしてしまっているということでした。 もちろん、私たちはある特定の文脈、つまりある特定領域に基づいて能力を発揮していく生き物...
21. 平常心の価値とスキルレベル
発達を階段状あるいは梯子上のプロセスとみなしてしまう伝統的な発達理論とは異なり、スキルは構成的な網の目構造を構築しながら発達していくというカート・フィッシャーの考え方は、スキルが持つ多様な発達過程やそれが動的に構築されていくという側面を見事に反映しています。...