53. 発達の共時性:ロビー・ケースの実証結果
ここ数回の記事で、領域特定型発達モデルの限界について言及してきました。もう一度おさらいをしておくと、領域特定型発達モデルの限界点は、発達の可変性を蔑ろにしてしまっているということでした。 もちろん、私たちはある特定の文脈、つまりある特定領域に基づいて能力を発揮していく生き物...
52. 領域特定型発達モデルの誕生とその限界
カート・フィッシャーのダイナミックスキル理論は、あらゆる発達領域において適用できる測定の物差しを提供したため、「領域全般型発達モデル」と呼ばれます。それに対して、ロバート・キーガン、オットー・ラスキー、スザンヌ・クック=グロイターなどの発達理論家は、ある特定の発達領域に焦点...
50. 既存のパラダイムの死と新たなパラダイムの誕生
発達理論という一つの科学分野が経験してきた、パラダイムの転換に伴う苦難に目を向けてみると、パラダイムの変革が起こったというよりも、現在はその過渡期にあると述べた方が適切でかもしれません。 カート・フィッシャーが指摘するように、発達理論が果たすべき主要な役割は、人間の発達現象...
49. 発達理論のパラダイムシフト:発達理論の思想潮流
私自身の学習史を振り返ってみると、これまでは様々な発達理論家の理論や測定手法を学ぶことに主眼を置いていました。現在の関心は、もちろん発達理論のフィールドに存在する多種多様な理論や測定手法の理解を深めることにもありますが、それ以上に、より大きな視点を持って発達理論そのものを捉...
48. 新ピアジェ派の台頭:静的構造思想とその批判者との対立史
これまでの記事では、人間の発達を静的なものとみなす思想に対して批判的な見解を示し、発達を動的なものとみなす思想に好意的な見解を示してきました。ここで注意しなければならないのは、確かに人間の発達は極めて動的なプロセスなのですが、発達構造が内包する規則性というものを蔑ろにするわ...
42.生得論と経験論の暗黙的融合
前回の記事で、生得論者と経験論者の争点とデカルト的二元論が既存の発達理論のパラダイムにもたらしてきた影響について述べました。発達に関する両極の議論は、この一世紀以上続いています。 両極に属する近年の発達論者の議論を俯瞰してみると、どちらも厳密の意味で生得論的主張でも経験論的...
40. デカルト的認識論を超えて:既存の発達理論パラダイムの根幹にあるもの
発達理論の長い歴史において、これまでどうして多くの発達理論家は、心の動的な特性を認識することができなかったのでしょうか?実際には1980年代から、カート・フィッシャーやカーネギーメロン大学教授のロバート・シーグラーは、発達の可変性について研究を進めていましたが、それらの研究...
38. ピアジェの理論の再考:ピアジェの功績と超克すべき点
発達理論を語る際に、ピアジェが残した功績を忘れることはできません。確かにルソー、カント、ヘーゲルなど、ピアジェ以前の思想家も人間の発達について言及していましたが、心の発達が持つ構造的な特性を体系的に研究したのは、ピアジェが最初であると述べても過言ではありません(ピアジェより...
37. 生得論と目的論を超えて:発達の青写真と発達の行く末
これまでの記事で明らかなように、人間の発達は、実に複雑で神秘的ですらある現象です。それでは、私たち人間の発達に終着点はあるのでしょうか? 目的論的な考え方を採用すると、発達現象には目的があり、私たちはどこかに向かって発達しているとみなすことができます。しかし、実際のところ、...
36. アーンスト・モエークの言語発達理論:言語発達における母親の重要性
スキル理論を用いて言語の発達を研究しているアーンスト・モエークは、言語習得における母親の重要性を強調しています。モエークは、言語発達の基盤は、幼少期における両親とのコミュニケーション、特に母親とのコミュニケーションを通じて構築されると指摘しています。...