223. 言葉の履歴書
——「名付ける」とは、存在を明澄の場(人間的空間)にもたらすことであった——辻邦生 今朝、毎朝焙煎している有機豆のコーヒーが全て無くなった。人は自らの余命に限りがあることを知った時、そこからの一瞬一瞬は全て新鮮なものとして目に映り、ありふれたものだとこれまで思っていたものた...
220. 生態系(ecosystem)としての知性発達
先日から数回にわたり、発達理論に造詣の深い知人の方と意見交換をさせていただいていた。ロバート・キーガンが提唱した構成的発達心理学(constructive developmental psychology)やピアジェ派や新ピアジェ派の構造的発達心理学(structural...
218. 成長・発達に不可欠な権威的存在
先日、クライアントとのセッションの中で、一つ興味深い論点が浮上した。「父性」あるいは「力強さ」と呼ばれるものの大切さについて話題となった。 拙書『なぜ部下とうまくいかないのか:「自他変革」の発達心理学』を読んで誤解を与えてしまっていたのであれば申し訳ないのであるが、段階5を...
217. 能力の発達に関する「5つの変容原則」
元ハーバード大学教育大学院教授カート・フィッシャーは、 “A Theory of Cognitive Development: The Control and Construction of Hierarchies of Skills...
210. 読者の方から寄せられた質問事項(No.9)「構造はどのように生み出されるのか?」
東京は本日も雨ですね。皆さんのお住いの地域の天気はいかがでしょうか。 一日たりとも同じ雨の日はなく、一滴たりとも同じ雨滴がないというのは不思議ですよね。こうした不思議さに畏敬の念を覚えながら、是非とも今日の雨を「味雨」したいものです。 今回の記事は、拙書...
208. 「なぜ成長・発達しないのか?」:圧倒的な鍛錬の欠落
——生きた、愛した、書いた——スタンダールの墓碑銘より 澄み渡る朝の静けさの中に小鳥のさえずりを聞いて目覚めた。起床後、すぐに窓を開け、その日の搾りたての空気とエネルギーを全身に注ぎ込む。 電車が無機質かつ暴力的な音を立てながら走り去った。静かな音楽を届けてくれている小鳥た...
206. 発達科学と複雑性科学を架橋した功績者ポール・ヴァン・ギアートについて
私がフローニンゲン大学に留学することを決定付けた人物、それがポール・ヴァン・ギアートである。ヴァン・ギアートがいなければ、発達科学と複雑性科学の接点に出会うこともなかっただろうし、自分の研究や実践に複雑性科学のアプローチを採用しようと思わなかっただろう。...
200. キャリア段階ごとの職業人の自我と能力の発達
幾分気が早いのであるが、記事194で取り上げた「成人発達とキャリアディベロップメント」というクラスでの小研究テーマとして、「キャリア段階ごとの職業人の自我(identity)と能力(skill)の発達」を取り上げたい。 被験者を募るのはまだ先のことであるが、幾つかの専門職(...
199. 愚直なまでにただひたすらに
——学ぶとは、自分の中で何かが変わることである——上原専禄 愚直なまでにただひたすらに。この5年間、毎日継続してきたことがある。それは、起床直後の20分間の身体運動——ヨガと太極拳を統合したような脱力と柔軟力を意識した身体動作——と30分間の座禅である。その後の15分間の英...
196. 知性・能力発達に関するカート・フィッシャーの五つの段階モデル
過去のいくかの記事を通じて、私が在籍していたマサチューセッツ州の発達測定専門機関レクティカの測定手法について紹介してきた。Lecticaのいかなる測定手法も「LAS」と呼ばれる評価システムを基盤にしていることをこれまでの記事で見てきた。...